政策

01 コロナ禍。頑張る仲間がもっと報われるために!

経済的に報われていることが実感できる処遇の改善

すべての看護職を処遇改善の対象にコロナ禍、看護職は医療現場の最前線で必死に看護を提供しています。

ですが、その使命感だけに頼るのではなく、社会から適切な評価を受けながら働き続けることができる環境を整えなければなりません。

看護職の賃金アップについては、現在、様々な観点から議論が進んでいます。
2月からコロナに対応した看護職の賃金を1%(4千円)上げるための補助金が設けられていますが、10月からは診療報酬改定でこれを3%(1万2千円)とする方針が決まっており、中医協でそのための議論が進んでいます。

しかし、今回の対象は、就業している看護職の3分の1。

対象医療機関以外の看護職もそれぞれの職責を果たし、日本のコロナ医療を支えています。すべての看護職を処遇改善の対象とすること、そして診療報酬の加算分が全額賃金改善に反映させる仕組みの実現を目指します。

能力に応じてふさわしい給与となるように

そもそも、専門職である看護職の賃金は、一般的に高額であると思われているかもしれませんが、看護職の賃金は仕事の内容や役割・責任の重さに見合った水準とは言えません。

看護職の賃金水準は、20代前半では産業計の平均より少し高めですが、30代以降には逆転し、看護職の平均年齢である40代前半では約7万円のひらきがでてきます。その後、年齢が上がるにつれてその差は広がっていきます(図1)。また、その給与額は、最終的には他の医療関係職(薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師などの皆さま)の中で最も低くなってしまいます(図2)。

日本看護協会、協会ニュースVol.647,2021.12.15より転載
日本看護協会、協会ニュースVol.647,2021.12.15より転載

この状況を変えていきたい!そう強く思っています。そのためには、まずは国家公務員の看護職に適用され、民間の看護職の賃金にも大きく影響を与える「医療職俸給表(三)」 (人事院が定めるもの)を変えていかなければなりません。現状、新人から副看護師長までの約8割の看護職が、2級に留め置かれ、給料が低く抑えられている状況を改善しなければなりません。 それぞれの職務、職責、専門性、そして能力に応じてふさわしい給与となるように、処遇を改善していく必要があります。

平時から余裕を持った人員配置

このコロナ禍、看護職の業務は増えるばかりで、一人一人にかかる負荷がとても大きくなっています。

その原因の1つとして、これは平時からの問題ですが、日本の病床あたりの看護職員の配置数が少ないという問題があります。

たとえば、急性期医療において、日本の病床あたりの看護職員数は、OECD加盟国35か国のうち30位となっています。この状況では、安全・安心な医療・看護の提供は困難です。また、急性期医療における在院日数の短縮などにより、療養病棟においても医療依存度の高い患者が増加しています。今の人員のままでは休憩時間を適切に確保することも難しくなってきています。

平時から余裕のある人員配置を実現し、有事にも対応できるように勤務環境を整備していくことが必要です。

02 看護師がもっといきいきと働き続けられるために

夜勤負担の軽減、長時間労働の解消の仕組み

コロナ禍で看護職員の就業環境が一層過酷となり、夜勤負担が過重となりました。

日本の夜勤交代制勤務のシフトは日勤と夜勤が同じ週に組み込まれるなど、日中の勤務と夜間の勤務の入れ替わり頻度が高く、サーカディアンリズムが乱れやすい状況になっています。しかしながら、現行の労働基準法などの法律では、看護職の夜勤や交代制勤務に対する規制が十分にはなされていません。

これらの問題に対し、まずは、看護師等の人材確保の促進に関する法律(人確法)で定めることが求められている「看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針」(この指針は 人確法ができた平成4年から1度も改訂されていない)などを時代に合わせて適切に改訂することが必要です。

同指針に、夜勤負担軽減の改善目標などを適切に定めること(3交代以外の夜勤回数の目安、勤務間インターバル11時間の確保、深夜業の回数制限、総労働時間の短縮など)により、看護職の働き方を適切なものにしていきましょう。

ハラスメントの対策の推進

ある調査では調査対象となった医療機関の80%以上で、看護職に対する身体的暴力・精神的暴力、ハラスメントがあったと報告されています。

これは医療機関における調査ですが、 看護職が利用者の自宅に訪問して看護を提供する訪問看護の現場においても、この問題は重大な課題です。

この点について、今は十分な法整備がありません。

パワハラ防止法が改正され、職場内におけるハラスメントについては、今年4月からすべての企業に対して義務付けられましたが、顧客からのハラスメントについては持ち越しとなりました。女性活躍推進法改正案に対する附帯決議として、顧客から労働者への著しい迷惑行為などへの実態を踏まえた防止策を講じること、訪問看護や医療現場でのハラスメントへの対応策の具体的検討という点が入りましたが、今後は立法も含めてさらに対策が進むように検討がなされる必要があります。

皆さんが、より安全かつ快適に働くことができるように暴力・ハラスメント対策を進めます。

03 地域社会にもっと訪問看護を!

訪問看護、看護小規模多機能型居宅介護などの人材確保・環境整備
安心な暮らしを支える看護提供体制づくり

日本の医療提供体制は、病院完結型から地域完結型へと移行が進められています。

医療・ 介護ニーズを併せ持つ高齢者が住み慣れた自宅で療養生活を送るうえではこの訪問看護はとても重要です。2025年に推計値では約12万人の訪問看護師が必要と言われています。しかし、今の増加率のペースですと、2025年には7万5980人にしかならず、4万5000人の増員が必要です。

04 看護職にもっと安心・安全を

医療紛争の裁判によらない解決手続きの確立と普及
医療事故の再発防止に向けた取り組みの推進

これまで医療裁判をいくつも担当してきました。

裁判になると、どうしても原告と被告という対立関係になってしまいますが、医療の紛争の場合、必ずしも両者が対立関係にあるとは限りません。

医療事故にあった患者さん側は、どちらかというとすぐに訴えたいというのではなく、何があったのか知りたい、説明してほしい、謝罪してほしい、といった思いを持っています。 病院側も、その患者さん側の気持ちに沿った対応ができるのであれば、時間的経済的な負担も大きい裁判などではない方法で問題を解決できる可能性があります。

現在も、医療ADR(裁判外紛争解決手続)といって、医療紛争について、裁判によらずに、中立公正な第三者のもとで、話し合いによる解決を目指す手続きがあります。ただ、このような解決策の存在を知らない医療者も多いのではないでしょうか。また制度自体の課題もあります。

医療者にとっても、患者さんにとっても、一番負担の少ない解決方法を制度として確立し、 広げていくことができればと考えています。そもそも医療事故が発生しないように、再発防止策についても今後さらに取組みを進めます。

05 看護職がもっと安心して子育てができるように

病児・病後児保育施設など多様な保育の受け皿の整備
「小1の壁」が生じないよう学童保育の拡充

病児・病後児保育は、以前より整ってきていると思いますが、私自身、朝、こどもが熱を出し、心配をしながらも「今からどうしようと冷や汗をかいた経験が何度もあります。地域格差を是正し、病児保育施設の健全運営とともに、利用者が利用しやすいような支援策を進めます。

私の長男は4月に小学1年生になりましたが、放課後児童クラブ選びがとても大変でした。私の住んでいる自治体が提供している学童は、終わる時間が早く、終了時間までに迎えに行くことが難しいのです。まして、交代制勤務で働いている看護職であればなおさらですね。

民間の学童は高額で経済的な負担が大きいです。今まだ残る「小1の壁」が生じないように必要な拡充を行います。

もちろん保育の質も重要です。当然ですが、親としては、こどもを安心して預けられてこそ、仕事に集中することができ、能力を最大限発揮することができるのです。保育や放課後児童クラブの質を保つためには、やはり保育士や指導員の給与をもっと上げる必要があります。こどもの命を守る職業です。それに見合った処遇を検討すべきです。